So-net無料ブログ作成
前の5件 | -

しっとり系、サクサク系、そしてやさしい系。

 近頃、食パンだけを売る専門店がいくつもできている。テレビ番組で特集され、お客さんが行列を作って買っている。なぜ並ぶのかというと、やはりそれだけの価値があるからだろう。美味しい物を食べると誰だって幸せな気分になる。お肉でも果物でもデザートでも一緒で、みんなその幸せを買うために並んでいるのだろう。
 
 私はパンが好きなので、以前から気になるお店があるとたずねて行って、その時の気分で食べたいパンを選んで買っていた。惣菜パンや菓子パンなどである。
 あるとき、パンが大好きという友人、Kさんから、「私はパン屋さんの評価は食パンの味で決まると思ってるので、初めての店ではまず食パンを買うことにしている」という話を聞いて、「なるほど」と納得し、それ以来、私も真似をすることにした。
 彼女は厚さにもこだわりがあり、切っていない食パンを買ってきて、自分のパン切り包丁で好きな厚さに切って、すぐに冷凍するのだそうだ。
 そして毎日、翌朝食べる分だけを解凍しておき、夜はそれを楽しみに眠りにつくのだと笑っていた。
 どんなに朝早く出勤する日でも、朝食のために十分な時間をとれるように起きて、珈琲も丁寧に淹れるのだそうで、美味しいパンを食べる喜びが彼女の生活のある種の支えになっているのだった。
 
 折しも世間は食パンブームである。
 話題になっているお店が私は気になってならない。でもその場所は確認できても、私はなかなかパンを買うことができない。そのためだけに時間を使うというのができず、何かのついでにと考えてしまって、いつもお店の前の売り切れの札に「あーあ」と溜息をつくことになる。これは、どうしても手に入れるぞ、という情熱、気迫が足りないせいだと思われる。
 けれどそういう流行のものを必ず手に入れる、というタイプの人がいて、そういう人はだいたい世話好きで、誰かを喜ばせたいという愛情に溢れているようなところがあって、こんな私でも、そういう方々のおこぼれにあずかる機会があるのだった。
 
 私は有名店の食パンをわりと食べている方だと思うけれど、それはすべて心優しい方々からいただいたものである。専門店ではないお店の場合は自分で行ってもたいてい買うことができるので、大阪、神戸、京都あたりのパン屋さんへは仕事帰りに寄ったりしている。
 そのなかで、私が食パンについて感じたことは、味や食感に三つの系列があるということである。
 いわゆる有名専門店の食パンは、高級な材料を使ってるなー、と実感できるような、しっとり感、もちもち感がある。
 フランスパンの美味しいパン屋さんが作る食パンはサクサクしていて、耳の部分にほんのり塩味がする(気がする)。
 初めはこの二種類かと思っていたけれど、もう一種類、やさしい系というべき食パンの系譜があることに気がついた。
 これは、しっとりとかサクサクとか、めだった特徴がない、ごく普通の、でもとってもやさしい味と食感のパンである。
 Kさんから、「私のおすすめ」といただいた彼女のお気に入りの奈良のお店の食パンはこの“やさしい”系のものだった。食後感に派手さがなく、穏やかで、控えめで、上品な美味しさがある。まさにKさんらしいパンだった。
 
 個人的にはしっとり系とサクサク系が融合したような、大阪肥後橋にあるパン屋さんの食パンが私は好きだけれど、どのお店のどの系統のパンもそれぞれに美味しくて、あとは食べる人の好みに任せるしかないと思われる。
 ひとつのお店で違う種類の食パンを作っているところもあり、製作者の探究心には頭が下がる。おかげで私達は幸せを買える幸せを味わうことができるのである。
 
 今、私が気になっているのは、テレビで見た神戸の食パン専門店である。
 場所的には神戸の仕事帰りに寄れるとこにあるのだけれど、焼き上がり時間が決まっていて、それがどうにも合わない。早すぎるか遅すぎるかする。
 時間を調整してなんとか自力で手に入れるか、誰か親切な人の出現を待つか、悩むところである。
 

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

どうしてかさぶたって

 初めて見る風景から受ける感動。しかもそれは頭をガツンと叩かれたような衝撃を伴っていた。
 スコットランドの首都エジンバラに到着したときの私の率直な気持ちはそんなふうだった。駅から外に出た途端に、誰が見ても凄い歴史を背負っていそうな古い町並みがぐいぐい迫ってきた。城壁に囲まれた荘厳な城は戦いの厳しさを連想させる、今にも中世の騎士が現れそうな気配があった。
 ロンドンから列車で四時間以上かけてたどり着いた街は、他のどの土地にもない空気が流れているようだった。
 ハリーポッターがホグワーツ魔法学校へ出発したキングスクロス駅から列車はグレートブリテン島の東側を走り、海岸線に出る。エジンバラは海が見える街で、カモメが空を飛び、海産物が美味しいところだった。
 私は腰をいたわるため、観光地を巡らずに街にじっくりと浸りながら時間を過ごした。それであの街の雰囲気だけは充分に味わうことが出来たと思う。
 
 エジンバラには三日間滞在し、その後、電車で湖水地方に向かった。
 こちらは四回目なので懐かしさに近い喜びがあった。穏やかで美しい百年前の風景が私を迎えてくれた。
 ロンドンに戻ってからはデパートやスーパーマーケットを回ってひたすら買い物を楽しんで時間を過ごした。その日が何日で何曜日なのかを忘れていた十日間だった。
 
 今回の旅行は二年半ぶりだった。
 半年以上前からたてた計画はスムーズだったが、前後の日本の生活が想定外の忙しさで、私は出発前に腰を痛め、帰国後にはなんと手足口病に罹ってしまった。熱と発疹が出てしばらくは起き上がれなかったのだった。
 こんなことになったのは私だけかと思っていたら、同行した二人の友人もそれぞれ体調を壊していた。同年代なので、旅行疲れからか揃って免疫力が落ちてしまったようだった。
 
 今、私は回復し、やっと旅行の写真を現像しようとしているところである。
 病気のときは自分のパワーレベルが3くらい(10段階で)だな、と感じていたが現在はほぼ10にもどっている。
 手と足と口の中、それと頭皮に発疹が出る前日、今まで経験したことがないようなしんどさに、これはいったい何? と思ったのだけれど、今から考えると熱が上がっていたのだろう。私はもともと平熱が低いし、ここ十数年、熱を出したことがなかったので、熱が高い自分の状態というものがわからなかったのだ。
 
 真っ赤だった発疹は今は乾いてきている。
 そこにできたかさぶたを私はついはがしてしまう。どうしてかさぶたというのははがしたくなるのだろう。特に手の指にできたものは気になる。
 かさぶたをはがしながら、イギリスとスコットランドの楽しかった場面や美しい風景を思い出し、また若い頃とは違う自分の体力の低下に思いを馳せ、複雑な思いのこもった溜息をついているのだった。

タグ:エジンバラ
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

ギックリ腰

 10連休の初日にギックリ腰になってしまった。
 それで身体が調子よく動いた日々を恋しく思いながら、じーっと動かずに連休を過ごした。動きたくても痛くて動けないのだった。
 
 思えば4月の私は快調で、思いついたらなんでもすぐに実行できる状態だった。
 連休が始まる前に東京に行く予定があったし、10連休明けの大変さを見越してかなり根を詰めて仕事をしていた。
 急な転勤が決まった娘家族が引っ越し前後に我が家に滞在することになり、それに合わせて夫も単身赴任先から戻っていたので、私の家事の量はいつもの倍ほどになっていた。仕事の帰りに買い物をして、家に着いて玄関で靴を脱ぐと、その足で台所に立つ毎日だった。
 東京では3日間連続でトールペイントの講習を受けることになっていた。年に数回参加している。その受講は数ヶ月前に予約したものだった。ほぼ一人暮らし状態のときには楽しみにしていた予定だったが、急に家族が勢揃いすることになり、一家の主婦としては後ろ髪を引かれる思いで自宅を後にしたのだった。
 いつも午前のレッスンに間に合うよう、朝5時半に家を出る。準備も含めてまだ暗いうちに起床しなければならず、生活のリズムは完全に変わってしまうし、緊張感もあった。
 今ふり返ると無理をしていたと思う。自分のキャパを超えていたのだろう。
 
 10連休のおかげで、何にもしない、真っ白な一日を連続して過ごせたのは、ある意味、幸運だったかもしれない。おかげで治療に専念できたのだった。
 仕事は長い休みだったし、特に予定を入れていなかったので、誰にも迷惑をかけることはなかった。ただ、片付けをしたり、買い物に行ったり、鉢植えの世話をしたり、近くの植物園に散歩に出かけたり、というような、やりたかったちょっとしたことが何もできなかっただけである。家族がみんなで外出するときは一人で留守番をしていた。
 本は読むことができたけれど、原稿を書く気にはなれなかった。何通かの手紙だけを書いた。
 
 病院に行くにもどこもお休みだったので、湿布を貼ってひたすらじっとしていた。
 治らなかったらどうしよう、という恐怖だけがあった。若い頃のギックリ腰とは違う。老いるということはそういうことなのだと思った。
 自由に動けた日々が、奇跡のように感じられた。
 
 10日間の休みが終わって、私は仕事に復帰した。
 今、身体は8割くらい元通りになったがまだできないこともある。
 
 動作はいつもよりやや緩慢である。
 それでも言わなければいつもの私だと周りは思っているだろう。
 階段の踊り場で足踏みをしていたような10日間だった。
 一生の中には誰にでもこんな日々はあるのだろうと思う。
 元にもどれた有り難さをみんな感じるのだろう。
 意味があるとか無いとか考えることもなく、ただ淡々と過ごした時間だった。

タグ:ギックリ腰
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

丁寧に、ていねいに。

 音楽を聴きながら絵を描く、とか、本を読む、というようなことができない。
 どちらかひとつのことに集中してしまって、そうなるともう一方のことが気に障りだす。
 原稿を書くことに熱中するとどんなに素晴らしい音楽だってうっとうしく感じてしまう。反対もしかりである。
 こういう場合は潔くスイッチを切ることにしている。音楽を聴くときはただ聴くことに集中して他のことはやめる。するとその瞬間に気持ちがスッとする。
 朝、テレビを見ながら化粧をするというのも無理で、朝ドラなどは見入ってしまって手が進まない。番組が終わらなければ化粧は完成しない。
 よく言えば、どんなことも雑にしたくないのだ。真正面から向かい合って、その良さを吸収したい。すべてのことを丁寧にやりたいのである。
 気の済むまでやりなおしたい、確認したい、準備したい、調べたい、シミュレーションをしたい。それが思う存分できたときに幸福を感じるタイプなのである。
 
 ではこれを誰にも迷惑をかけずにやるにはどうすればいいか。
 私が近頃出した結論は、時間の余裕を持つことである。
 納得がいくまでこだわりたいなら、そのための時間をあらかじめ作っておく。
 だいたいの予測をたててスケジュールを組み立てておく。これだけ時間を使えばそれだけで満足だろう、というくらいのゆったりした予定表である。うまくいけば余りの時間を自由に使えるのも楽しい。
 
 そのために私は、引き受けていたいくつかの役職を辞し、趣味の整理をした。ある種の断捨離である。気の乗らない誘いは勇気を出して断るようにした。けれど気持ちが惹かれる場所には一人でも出かけて行く。きっぱりと自分のために時間を使う。
 
 朝起きて顔を洗うのも、朝食を作るのも、食べるのも、掃除も片付けも人付き合いも、買い物もガーデニングも、雑にやらない。
 丁寧に、ていねいにと自分に言い聞かせながらやっている。
 
 それでも焦るときはある。
 余裕がなくなるとイライラする。そしてそういう自分がいやになる。
 何事も理想通りにはいかない。
 
 五月の後半にはイギリス湖水地方へ四度目の旅に出る。
 半年以上前に計画したのにあっという間に近づいてきた。慣れているせいか今までの旅ほど丁寧な準備ができていないような気がする。
 
 そういう自分はやっぱり許せないので、もうそろそろ全力を出さなくては、と考えているところである。ベストを尽くして、後悔の無いようにしたいと思っている。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

春のコート

 3月になると急に日射しが明るくなる。
 こうなると、私はたまらなく春のコートが着たくなる。
 もともと本音と建て前というなら本音で生きたいほうだし、意地や見栄を気にするほうではない。性格的には花より実を取るタイプである。
 けれどこの季節だけはどうしても譲れないことがある。
 日射しは明るくても気温が低く風の強い日であれば、セーターにダウンコートを羽織るのが適しているだろう。
 それはわかっているのに、冬の装いをするのが嫌なのである。
 寒いからと冬のコートで出かけたときに、電車の中などで軽装の人を見かけると負けたような気持ちになる。これがとても悔しい。
 ここは多少の無理をしてもトレーナーにスカート、足下も黒いタイツを脱いでストッキングをはき、ああ私の脚ってこんなかたちだったのね、と思い出したい。
 
 思えば12月1月2月はひたすら防寒のことを考えて厚着をしていればいいのだから楽だった。夏や秋も気候に合わせて服装を選べばいいのだし、春も本当はそうするべきだと思うのだけれど、なぜかこの時期だけは無理をして実際の気候に合わない恰好をしてしまう。
 
 今日も朝から予想以上に強い風が吹く中を、春の白いコートで美容院へ行ってきた。
 ガラス張りの店内は日が燦々と差し込んでいて、自分の装いに満足できたし、そういう自分がうれしく感じられた。
 生け花や掛け軸は季節を先取りしたものを選ぶのが日本の美意識だというが、それに近い感覚だと思う。
 首元には以前はマフラーを捲いていたけれど今は代わりに薄いスカーフを巻いている。
帰りはこれを頼りに骨身に沁みる寒さのなかを歩いた。
 そして家に入るとすぐに防寒シャツとタートルのセーターに着替えたのだった。
 
 いつか年を取れば、こんなこだわりも捨ててしまうのだろうか。
 でも私は、これくらいのやせ我慢はいつまでもできる自分でいたいと思うのだった。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感
前の5件 | -